ベリリウム銅(英:Beryllium Copper)は、銅にわずか0.5〜3%のベリリウムを添加した銅合金で、高強度と高導電性を兼ね備えた優れた金属材料です。使用目的に応じて、含有量や熱処理方法によりさまざまな種類があります。中でも、強度重視の「BeCu25合金(C1720)」と、導電性重視の「BeCu50合金(Z3234-3種相当)」が代表的です。

特性
ベリリウム銅には以下のような特性があります。
1.高強度・高硬度
ベリリウム銅は、時効硬化処理(焼き入れ)により、非常に高い機械的特性を発揮します。引張強度は約1200MPa、硬度はHRC 38〜45に達し、工具鋼に匹敵するほどの硬さと耐久性を持ちます。
2.優れた電気伝導性
機械的強度を確保しながら、比較的高い電気伝導率を維持できる点も特徴です。純銅には及びませんが、電気接点や導体としても活用されます。
3.高い耐食性
酸化大気中での酸化に強く、湿気や化学薬品への耐性も優れているため、厳しい環境下での使用に適します。しにくく、湿気や化学薬品に対して強いです。
4.非磁性
磁気を帯びないため、磁場の影響を避けたい精密機器や電子部品などに適した素材です。
5.スパークを発しない
摩擦時にスパークを発しない性質を持つため、引火性ガスの存在する危険な環境下でも安全に使用可能です。これにより、防爆工具としての用途が広がっています。
注意点:ベリリウムの毒性
ベリリウムは吸入すると人体に有害であり、特に加工時の**粉塵吸入による健康被害(ベリリウム肺)**が問題となります。そのため、研削や切削などの加工時には、防塵マスクの着用や換気装置の設置など、十分な安全対策が不可欠です。
主な用途
ベリリウム銅は、その多彩な特性から、以下のような分野で幅広く利用されています。
- 電子部品:コネクタ、リレー、スイッチなど、導電性とばね性が求められる部品に適用。
- 精密ばね:耐久性と非磁性を活かし、電子機器の中の微小ばねとして使用。
- 金型部品:特にプラスチック射出成形用金型において、放熱性・耐摩耗性を生かして使われます。
- 防爆工具:石油化学プラントやガス設備など、火花を避ける必要がある現場で使用。
- 航空宇宙・軍事分野:過酷な環境下での使用に耐える素材として、構造材や電子装置に採用されています。
ベリリウム銅は、「強さ」と「機能性」を両立させた高度工業材料として、今後もさまざまな分野での活用が期待されています。