切削油の臭いの原因と対策

2025-07-18 | Metal Info

金属加工現場で使用される「切削油」は、加工の品質や工具の寿命を向上させるうえで欠かせない存在ですが、独特の臭いが発生することがあり、作業者の快適性や健康に影響を与える場合があります。特に夏場や使用期間が長くなると、臭いが強くなることが多く、「職場環境の悩み」として多くの現場で課題となっています。ここでは、切削油の臭いの主な原因と、それに対する効果的な対策を詳しく解説します。

切削油の臭いの原因と対策

切削油の主な種類と臭いの傾向

切削油は大きく分けて以下の2種類があります。

不水溶性切削油(ストレートオイル)

⇒ 鉱物油やエステル系油をベースにした油で、主に重切削や高速加工に使用。比較的臭いは強くないが、長期間使用で酸化臭が出ることも。

水溶性切削油(ソリュブル型、エマルジョン型など)

⇒ 水と油を混ぜて使う乳化タイプで、冷却性と洗浄性に優れる。微生物の繁殖によって悪臭が発生しやすいという欠点がある。

切削油の臭いの原因

1. 細菌やカビの繁殖

水溶性切削油では、タンク内の油と水が混ざった状態が、細菌・カビ・酵母など微生物の繁殖に最適な環境になります。これにより、腐敗臭、硫黄臭、アンモニア臭などが発生します。特に空気の届かないタンク底部では、酸素不足により嫌気性菌が活発になり、悪臭成分を生成します。

2. 切りくずや油の酸化

加工によって生じた金属切りくずがタンクに残ったままだと、それが切削油中で酸化・腐敗を起こし、酸っぱい臭いや焦げ臭を放つことがあります。また、酸化した油そのものからも**酸敗臭(油臭)**が出ます。

3. 温度と湿度

特に夏場は気温が上がり、タンク内の水温が30℃以上になると微生物の繁殖が加速し、臭いが一気に強くなります。

4. 管理不足

適切な濃度管理がされていない(薄すぎる)、タンクの清掃を長期間行っていない、廃液や異物が混入している、などの不適切な管理が臭いの温床となります。

臭いへの主な対策

1.定期的なタンクの清掃とメンテナンス

  • 使用期間が長くなると、タンク底に**スラッジ(ヘドロ状の沈殿物)**が溜まり、これが悪臭の発生源になります。
  • 最低でも3~6ヶ月に一度はタンクを完全に排出し、内部を清掃することが推奨されます。

2.濃度の管理

  • メーカー推奨の濃度(通常は3〜10%程度)を保つことで、微生物の繁殖を抑制できます。
  • 濃度が薄すぎると、防腐効果が弱まり、臭いの原因となります。
  • 濃度計(リフラクトメーター)で定期的に測定するのが有効です。

3.抗菌剤・防腐剤の使用

  • 水溶性切削油には、**バイオサイド(殺菌剤)**を定期的に添加することで、細菌の繁殖を防げます。
  • ただし、種類によっては人体への影響もあるため、取扱説明書やメーカーの指導に従って慎重に使用しましょう。

4.エアレーション(空気の注入)

  • タンク内に空気を送り込むことで、酸素濃度を高め、嫌気性菌の繁殖を防止する方法です。
  • 安価で効果的ですが、エアポンプや配管の設置が必要になります。

5. フィルター・スキマーの導入

  • 油膜や切りくずの浮遊物を除去する**油水分離装置やフィルター、スキマー(浮上油除去装置)**を導入することで、清潔な油を保ちやすくなります。

6. 交換サイクルの見直し

  • 無理に油を長期間使い続けず、定期的に交換することが臭いの根本対策になります。
  • 一般的に水溶性切削油は半年~1年以内に交換するのが理想です。

作業者の健康と快適性のために

切削油の臭いは、単なる「においの問題」だけでなく、作業者の不快感や頭痛・倦怠感、さらには皮膚炎などの健康リスクにつながる可能性もあります。したがって、現場の快適な作業環境づくりのためにも、切削油の臭い対策は非常に重要です。

まとめ

切削油の臭いは主に微生物の繁殖、油の劣化、管理不足などが原因で発生します。定期的な清掃とメンテナンス、濃度管理、防腐対策などを実施することで、臭いの発生を抑えることが可能です。作業者の健康と快適な職場環境のために、**「臭いの見える化」**と「予防保全」を意識した管理が求められます。

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