意外と知られていない金属の臭いと銅イオンの抗菌効果
「金属の臭い」と聞いて皆さんはどんな臭いを想像しますか?例えば10円玉を触ったときのあのツーンとした臭いや、鉄棒を触ったときの何とも言えない嫌な臭い、街角の手すりなど触った後も手に変な臭いがついてたりしますよね。あれが金属の臭い、と思っている方も多いと思います。
実はそれ、大間違いです。金属を触った後に手についている臭いは、実は自分の臭いなんです。正確に言うと、手についていた皮脂成分が金属と反応した臭いで、金属の臭いではありません。
たとえば 鉄棒を触った後の臭いは、手の皮脂が鉄棒の鉄と金属反応を起こし「ケトン」という物質が発生します。このケトンがあの鉄棒の後の臭いの原因なのです。また10円玉を触った後のあの臭いもやはりケトンが原因です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/1-%E3%82%AA%E3%82%AF%E3%83%86%E3%83%B3-3-%E3%82%AA%E3%83%B3
さて、この10円玉と鉄棒には大きな違いがあります。 10円玉の成分は95%が銅ですが、鉄棒の成分は鉄あるいはステンレスです。つまり銅と鉄というまったく相反する金属です。ここで重要なのは抗菌作用です。金属の中で銅は最強の抗菌作用が働きますが、鉄やステンレスには抗菌作用はほぼありません。
銅はわずかな水分と反応することで銅イオンを出します。この銅イオンは金属界最強といえるほど強力な殺菌効果を持っています。コロナウィルスやインフルエンザといったウィルスはもちろん、O-157やノロウィルス、バクテリアなどの細菌類、カビ、アオミドロやアオコといった藻類など、人間に有害なほとんどの病原体を撃退(不活化)してくれる頼もしいやつらです。10円玉を靴の中に4~5枚入れておけば、1、2日で殺菌、消臭されますし、神社やお寺の池などによく10円玉が投げ込まれていますが、あれはボウフラ対策でもあるのです。
つまり10円玉は抗菌作用が常に働いているため抗菌された状態ですが(ここでは酸化はおいておき)、一方の鉄やステンレスにはこのような抗菌作用はほぼなく、菌類が繁殖される環境にあるというわけです。金属で抗菌作用がまともに働くのは主に銅と銀でだけで、身の回りに多い鉄やステンレス、アルミなどには抗菌作用がほぼないのですから、鉄棒を触ったあとの手には、もしかすると菌が付いているかもしれませんし、ドアの取っ手や手すりも前の人が菌を置いていけば次の人にその菌が移ります。アメリカのある医学博士は、「手に触れる様々な金属体すべてが銅合金になれば、感染症リスクが格段に減り年間の医療費も抑制される」と報告しています。
この銅の殺菌効果がコロナ後に世界中で見直されていますが弱点もあります。それは銅や銅合金が酸化しやすいためすぐに黒ずんでしまう点です。製品にしたとしても見た目が悪くなってしまうため、銅合金なかなか浸透していかない理由になっています。
そこでMTA合金が新たに開発した銅ステンレス「MTA-S10」をご紹介します。MTA-S10はステンレスにわずか10%の銅を含有させることで、銅と同レベルの抗菌作用を持ちながら錆びにくい特性も加味された新しいステンレス材です。これまで鉄と銅の合金は不可能とされてきましたが、MTA合金が開発した新たな技術を使い誕生いたしました。まだ丸棒や板材(ビレット)は開発中ではありますが、これらが完成すれば、世界中の医療や食品関連、畜舎や海洋分野など将来様々な場面での応用が期待されています。特に食中毒やマラリア、アフリカの飲料水問題の解決に大きな期待を寄せています。現在販売を開始しているのはMTA-S10金属粉末のみですが、こちらも銅イオンの効果を必要とする分野で塗料やシリコンなどで用途開発が進められています。