技術情報

地球に存在する金属は産業発展において大きな役割を果たして来ました。おそらくこれからも先端技術を支える最も重要な存在であることは間違いなでしょう。しかし多くの金属は単体では使い物になりません。そこで物理・化学を問わず各分野では各金属の性能を向上させるために様々な金属を掛け合わせ、血のにじむような研究や開発の末、数多くの『合金』を誕生させてきました。古くは青銅に始まり、炭素鋼、ステンレス、ベリリウム銅など数多くの合金が社会で活躍してきたのです。その『合金』は実はそう簡単にはできません。金属が合金化されてもお互いの性能を殺しあってしまう合金も多く、結局役に立たない、という合金もこれまで数えられないほど開発されてきたのだそうです。

鉄と銅が固溶しにくい原因

世の中で最も広く使われている「鉄」と「銅」ですが、この鉄と銅はお互い固溶しにくい代表的な金属の組み合わせです。
2つの金属の比重や常温での結晶構造の違い、また融点の違いなどで、熔解時に液相現象や凝固時偏析などが発生が生じてしまうのです。
そのため銅に鉄を3%程度固溶することが限界で、それ以上鉄を入れることは不可能だと言われてきました。

世界初鉄90%銅10%合金「MTA9100」誕生

2016年、MTA合金は上記の問題を解決する独自の製法の開発に成功、純鉄に純銅を10%固溶化させた合金の試作に成功しました。これは銅に鉄3%以内を合金化させたC194などに代表される鉄入り銅とは全く違う、ほぼ不可能といわれてきた「鉄」に「銅」を固溶化させた世界初の「鉄銅合金」の誕生です。この特別な製法は韓国の冶金学専門のLEE博士が考案したもので、長年鉄と銅の合金化を夢見てきた博士が蓄積してきたデータから常識では考えられない発想とひらめきでその製法を思いつき完成したものです。何にでも使える合金という意味から【Multi Tool Alloy】 頭文字をとってMTA合金と命名され、2018年物質部門にて特許を取得致しました。
炭素鋼、ステンレスといった今では当たり前の合金以来の第3の合金として世界中から注目されています。
MTA9100焼入れ材のX線組成分析。 赤が鉄、黄色が銅。両金属がナノスケールまで全体的に分散されている。
MTA9100金属粉末のX線組成分析です。 赤が鉄、緑が銅。焼き入れ材と同様にミクロン単位の粒径まで一粒ごとに9:1の組成比で分散されている。
MTA9100 メタルパウダーを使用したSLM方式金属3Dプリンター造形物。右写真はX線回折を利用して結晶構造を調べた結果。パウダー、造形品両方とも常温の鉄のBCC構造しか検出されていない。銅のFCC構造が検出されないのは非常に特異なことで、これは鉄の中に銅が固溶化されているためと思われる。

MTA9100の活用分野

以上、MTA9100の固溶化について組織写真で説明しましたが、そもそも鉄と銅が混ざることで何のメリットがあるのか、どこに使えばよいのかという疑問が出てまいります。例えば鉄に炭素を入れれば硬くなり、クロムやニッケルを入れれば錆びにくくなる、では我々が新たに開発した新合金はどのような使い道があるのでしょうか。

1. 金型材

MTA9100の特性が最も生かせる分野はハイサイクル金型材です。金型の大半は鉄合金が主流ですが、熱特性を求めるところにはベリリウム銅合金やコルソン銅合金など銅合金が使われています。しかし銅合金には硬度・強度の限界と高コスト問題や環境規制問題などがあり、積極的に採用する金型メーカーさんは少ないのが現状です。弊社はまさにその代替材としてMTA9100をご提案しています。MTA9100は炭素フリーなので硬度・強度という鉄の特性を持ちながら、銅の特性である熱伝導性もございます。鉄の中に銅が固溶することにより緻密な組織になり、硬度は工場出荷レベルでHRC35、熱処理でHRC40まで出すことが可能です。その硬度に加え熱伝導率が70~80W/m・K程度ありますので熱しやすく冷めやすいハイサイクル金型材として期待できます。またMTA9100の融点は1496℃なので一般の銅合金の融点1100℃前後に比べ耐熱特性も優れています。さらに特筆すべきなのは高ベリリウム銅に比べ非常に安価でご提供していますので、経費削減にも大いにお役立つ安全なハイサイクル金型材となっております。

2. 金属3Dプリンター用パウダー

SLM方式の金属3Dプリンターは溶融と凝固を繰り返して積層していきますが、パウダーの中の元素が増えると溶融、凝固の過程の中で内部欠陥やクラックなどの不具合が生じやすくなってしまいます。MTA9100は鉄と銅のみの2元合金ですので、造形硬度HRC47の高品質な造形品を製造することが可能です。また鉄系の合金としては粒子がきれいな球状ですので流動性にも優れています。実際MTA9100メタルパウダーをオープンパラメーター対応の中国製SLMプリンターで造形したところ、内部欠陥のない高強度の造形品ができました。
これ以外にもサポートフリー15度実現、ラティス、ポーラス構造も可能ですのでトポロジー最適化・軽量化にもご活用いただけます。

MTA9100メタルパウダーの研究論文が世界的に有名な学術機関で発表されました。

MTA9100メタルパウダーの特性について2019年から研究されてきましたが、このたび2020年8月にその性能が認めれられ、マテリアル分野では著名なグローバル学術誌「Journal of Material Research & Technology」に掲載されていました。

 

詳しくは下記のURLをご参考ください。

https://authors.elsevier.com/sd/article/S2238785420317737

3. 電極材

MTA9100は電極材としても使用可能な特性を持っています。TIG溶接などに使われる大電流電極は導電性と共に高硬度・耐摩耗性が求められますが、この特性を満たす材料としてはタングステン合金、ベリリウム銅などが主に使われています。しかし性能や加工性さらには寿命、環境規制などの課題があり、また高単価なことからMTA9100を代替材としてご提案しております。MTA9100は切削加工、MIM、3D造形品など形状の自由度が高く、通電性や耐摩耗性が優れており、安価でご提供可能なことから経費削減にお勧めしています。現在、大手自動車メーカーから依頼された電極材がタングステン合金、ベリリウム銅合金に比べ性能が良いとの評価を頂いており、量産化に向けて開発を進めています。

4.線材試作

上記は100μmまで伸線したMTA9100の線材試作品です。引張強度 1480MPa、電気抵抗率 1.1×10⁻⁷Ω・m、許容電流 0.9A(自社測定)の特性がございます。 通電性はプローブピンで使われているタングステン合金、ベリリウム銅、パラジウム合金などと同レベルの特性を持っています。適用分野としては高強度を要求するケーブルや半導体のプローブピン、バネ材などがあり、現在レアメタルや環境規制物質の安価な代替素材として開発を進めています。

共同研究開発
共同研究、共同開発案件、いつでもお待ちしております。

以上、MTA9100の製品化に向けて弊社が研究・開発を進めている分野について説明してきました。今後は線材、極細ワイヤー、板材などに加え、インゴットを利用した鋳造、鍛造、機械加工による半製品の開発、熱伝導性・引張強度・弾性・耐摩耗性・電磁波遮蔽・抗菌性を活かした様々な加工品をご提供してまいりますのでご期待ください。
またMTA合金を使った新たな共同研究並びに共同開発のご提案も随時お待ちしておりますのでお気軽にお問い合わせください。

 

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